1人が本棚に入れています
本棚に追加
彼が所属する組織の制裁役である。
依頼人からお抱えの殺し屋まで、とにかく組織の規律を犯した者全てに放たれる。
全員が腕利きの殺し屋であるのはもちろんの事、犬の異名を与えられた通り、組織が絶対の忠義を認めた者達でもある。
背後にひたりひたりと付きまとう気配を感じながら、狼はより人の多い方へと進んで行く。
時にはわざと細い路地等に入りつつ、複雑な迷路を進むような軌道で決して留まらない。
その間にも、気配の分析は忘れない。
(三人、か)
追跡者は、彼が気付いて行動を開始してから一人増えていた。
どうやら、猟犬達の中でも特に腕の立つ者が居るようだ。
だが、所詮は犬。狼が噂に聞いたとおり連携は薄いらしい。組織の覚えを良くしようといった所である。
そもそも、猟犬は、その制裁対象によって放たれる数が違う。
組織にしてみれば、リスクを減らし成功率を高める為にしている行為だが、それが今は彼に付け入る隙を与えていた。
地区最大の大通りに出た所で、追跡者の一際大きく分散する。
狼は素早く流れに乗ると、感じる視線が一つになった瞬間、手近なマンションへと体を滑り込ませた。
後からマンションへと入って来たのは、スーツ姿の男だった。
最初のコメントを投稿しよう!