狼のあり方

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 彼が所属する組織の制裁役である。  依頼人からお抱えの殺し屋まで、とにかく組織の規律を犯した者全てに放たれる。  全員が腕利きの殺し屋であるのはもちろんの事、犬の異名を与えられた通り、組織が絶対の忠義を認めた者達でもある。  背後にひたりひたりと付きまとう気配を感じながら、狼はより人の多い方へと進んで行く。  時にはわざと細い路地等に入りつつ、複雑な迷路を進むような軌道で決して留まらない。  その間にも、気配の分析は忘れない。 (三人、か)  追跡者は、彼が気付いて行動を開始してから一人増えていた。  どうやら、猟犬達の中でも特に腕の立つ者が居るようだ。  だが、所詮は犬。狼が噂に聞いたとおり連携は薄いらしい。組織の覚えを良くしようといった所である。  そもそも、猟犬は、その制裁対象によって放たれる数が違う。  組織にしてみれば、リスクを減らし成功率を高める為にしている行為だが、それが今は彼に付け入る隙を与えていた。  地区最大の大通りに出た所で、追跡者の一際大きく分散する。  狼は素早く流れに乗ると、感じる視線が一つになった瞬間、手近なマンションへと体を滑り込ませた。  後からマンションへと入って来たのは、スーツ姿の男だった。     
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