1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
影
先輩は、傘を持っている。
雨の日も・・・。
晴れの日も・・・。
朝の電車の中で見かける隣の高校の先輩。
クールで、無口で、綺麗な顔立ち。
ちょっぴり悪っぽく見える仕草に、
心を奪われ、毎朝、
胸がキュンキュンしていた。
電車の中の20分が私の至福の時。
見ているだけで、幸せ。
朝日が、先輩の顔と相まって眩しい。
こんな晴れた日も、先輩は傘を持っている。
いつも一人で電車に乗っている先輩。
でも、あの日は、違ってた。
「よっ、久しぶり」
隣の駅から乗った
見たことのない制服姿の男の子は、
先輩に声をかけた。
「お前、まだそれ持ってんの?」
先輩は、少し笑った。
「いい加減、忘れろよ」
友達らしきその人は、先輩にそう言った。
少しの沈黙があった後、
「ほっとけよ」
先輩は、髪をかき上げながら、
少し真顔で、そう答えた。
最初のコメントを投稿しよう!