Rose

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Rose

 はっきり言って、僕はずいぶん前から恋愛にはそれほど興味がなかった。周りの友人たちは恋人を作って、デートやら旅行やらをしているが、そんなことは気にもならない。少なくとも、自分に恋人がいないことを引け目に感じたことはない。特別に恋人がほしいという感情も沸かない。もしかしたら僕はどこかに恋愛感情というものを置き忘れてきてしまったのかもしれない。だけど、どこに置き忘れたのかもわからないし、今更取りに戻るつもりもない。  そんなふうにして迎えた大学二年の春、僕は全ての講義を終えてから家路についた。僕は大学に通うため、実家を離れて一人暮らしをしている。だから、食事はいつも学食か、大学のそばの食堂か、コンビニに頼っている。自炊した方がいくらか食費が安く済むことくらいわかっている。だけど、僕はまともに料理などしたことはなかったし、仕送りにアルバイト代を合わせるとお金に困ることはなかったから、どうしても自炊しようという気にはなれなかった。     
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