第十四章

5/7
前へ
/103ページ
次へ
「···ただ、手紙のお礼を言えてないことを気にしてるようだったから、何かあたしも気になっちゃって···そのことを伝えたかったんだ」 そこまで言って美波は立ち上がると、制服のスカートを真っ直ぐ伸ばし鞄を手にした。 「突然お邪魔してごめんね。じゃあ、あたし帰るから、それ、ちゃんと食べて元気出してね?」 笑顔で首を傾げ、奈緒を覗き込むと、手を振り扉に手を掛けた。 「待って」 奈緒は振り返った美波にもう一度言った。 「待って、笹井さん」 美波は鞄を置くと、立ち上がり引き出しを開けて何かを探す奈緒の隣へ立った。 「これ、見て」 差し出された一通の手紙。 貰った手紙を、ずっと仕舞っていた。 中を開き見た美波が驚きの表情へ変わる。 「あたしの名前?」 大きく頷く奈緒の前、美波は暫く考え込み、それから徐ろに鞄からノートとペンを出すと、同じことを書いた。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加