第二章

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「奈緒ちゃんそんなに濡れてどうしたの!?」 歩生が玄関先で傘をたたむ。 おばさんが差し出すタオルが頭に被せられた。 「手がこんなに冷たくなってー、」 おばさんに手を握り締められ、その温かさに涙が出そうになった。 「おばさん、急にごめんなさい...」 「奈緒ちゃんならいつでも歓迎なんだから、とにかく入って」 小さな頃から、歩生のお母さんにはとても良くしてもらっている。 お母さんが亡くなった夜も、私が寂しがらないようにって、歩生と一緒に傍に居てくれた。 奈緒は照れ笑いを浮かべ、靴を脱いだ。 「母さん、奈緒に風呂かしてやって、」 歩生はぶっきらぼうにそう言って、奥の部屋へと向かって行く。 「あ、や、いいよ。大丈夫!すぐ帰...る、から、」 帰るー、 その言葉がはっきりと言えなかったのは、お父さんとの事を思い出してのことだった。 歩生は振り返って、怪訝に奈緒を見つめる。 「今更うちに気なんかつかうなよな、」 「そうよ奈緒ちゃん、お風呂入って来なさい。歩生、覗くんじゃないわよー」 「覗くか!」 クスクスと優しい笑顔で笑ったおばさんは、何かを察したように、その後の言葉を言わせないように洗面所まで手を引いた。 「着替え、出しておくからね」 「ありがとうおばさん」 奈緒がシャワーを出したことを確認した歩生の母は、安堵の息を吐き、リビングへと戻った。 「歩生、奈緒ちゃん何かあったのかしら?」 リビングで横になった歩生が視線を起こす。 「何かって?」 「何か聞いてないの?」 腕組みしながら母は歩生の隣に腰を下ろした。 「知らねぇし、何もないだろ。いちいち気にし過ぎなんだよ、」 「あら、歩生は心配じゃないの?」 きょとんとした眼差しで歩生を覗き込んだ。 「何かあるならそのうち言うだろ、」 歩生は立ち上がると、自室のある二階へと戻るため、リビングを出て行った。
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