第二章

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「何か歩生って、お兄ちゃんみたい...」 振り返って、クスッと笑みを落とすと、歩生に布団を掛けた。 「今日は帰るね歩生お兄ちゃんッ」 悪戯に笑って、眠る歩生にそう言った。 「ーーッ、!!」 突然掴まれた手首ー、 「ちょっ...歩生!?」 引き寄せられ、もう片方の手で背中を持っていかれるー、 気付いたら、歩生の胸の中に居た。 何が起きたのかわからず、一瞬戸惑って、それから小さく視線を起こした。 「...めちゃくちゃ近いじゃん...」 思わず目を伏せる。 そーじゃなくて!! 何なのよこれ。 「歩生...離してってば、!!」 抜けだそうとすればするほどぎゅっと力が入る。 「ほんとに寝てるの!?」 スヤスヤと聴こえた寝息。 ゆっくりと響く鼓動。 歩生の胸の中で、溜息をついた。 「...起きてたら、こんなことするわけないか、」 幼馴染み以上、私と歩生は兄妹みたいに過ごしてきた。 それなのに、抱き締められて、ドキドキが止まらない違和感。 こんなに近いのは初めてだった。 昔は私の方が背が高かったのに、ちゃんと男の子なんだ、 「歩生...おばさん上がって来たらびっくりするよ?」 小さく胸の中で呟いて、歩生の温もりに目を閉じた。 心地良かった。 寂しくなかった。 その腕の中で、奈緒は少し涙を滲ませ、深い眠りに落ちていったー。 「ったく...誰がお兄ちゃんだ、」 いつまでもガキじゃねぇっての。 眠る奈緒を見下ろして頭を掻いた。 「...」 歩生はまた、奈緒を抱き締めた。
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