第三章

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カーテンの開く音で、瞼の向こうに光が射した。 布団の中の温かさが気持ち良くて、寝返りを打つ。 ん? んん? 人の体温に思わず目を開けた。 「ああああ...歩生ー!?」 ガバッと起き上がると、ニコニコと笑った歩生のおばさんが、 「二人とも、起きないと遅刻するわよ」 と、何事もないようにそう言って、カーテンの両端を纏めていた。 歩生は大きな欠伸をしながら起き上がると、ベッドの上で呑気に伸びをした。 「一緒に寝てしまった...」 項垂れた奈緒に気付いた歩生が、先に立ち上がると、何事もなかったようにまた大きな欠伸をする。 「...っだよ今更。ガキの時なんか殆ど毎日一緒に寝てたじゃん、」 「確かにそれはそうだけど...」 まごまご言ってると、おばさんが顔を覗き込んでくる。 「奈緒ちゃん歩生と付き合ってるんでしょ?おばさん、奈緒ちゃんなら大歓迎よッ!!」 「つきあ...おばさん!?」 呼び止める頃には、朝ごはん食べてってね、そう言い残して部屋を出て行った。 「早くしねぇと遅刻すんぞ、」 くしゃくしゃに頭を撫でられ、そのまま歩生も居なくなる。 「子供の時とは違うじゃん...」 そう、あんなふうに抱き締められたせいなのか、まだ胸のドキドキが止まらなかった。
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