第三章

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頬杖ついて窓の外を眺める。 5組は体育かー、 歩生の姿が視界に入って、昨日のことを思い出す。 何で、意識してんのよ。 あんなの、昔からあったことなのに。 「だれだれ?誰を見てたのー?」 後ろの席の亜美が小声で突然そんなことを言い出して、奈緒は瞬間びっくりしたように視線を逸らした。 「誰も見てないよ。」 「あ、やっぱり赤坂くん?」 亜美の視線を追う。 「仲良いもんね。奈緒と赤坂くん」 「歩生はただの幼馴染みだよ。」 そんな風には見えないけどねって、亜美は悪戯な顔で奈緒の頬を摘んだ。 「何すんのー!」 摘み返した奈緒の前、亜美は先生を捉え、奈緒に前を向くよう促した。 「凪野 (なぎの) さん、この問題解いてみて」 「...はい、」 クスクス笑う亜美を恨みつつ、奈緒は席を立った。 瞬間、窓の外に視線を落とす。 気付いたら、歩生を見ていた。 こんな時に、混乱させる。 考えなきゃいけないことが山ほどあるのに。 黒板に答えを書いて、奈緒は席に着いた。 帰ったら、お母さんの菖蒲の水を変えよう。 それから、お父さんと話をする、 一緒に暮らすのは賛成出来ないって。 もう一度、 そこまで考えたところで、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。 「おーい!奈緒!」 教室の入口で歩生が大声で呼んでいた。 「奈緒ー!!」 奈緒は慌てて駆け寄ると、歩生の口を塞ぐ。 「もー!声がでかいの!」 「...っだよ、おまえが何回呼んでも気づかねぇからだろ?」 「え、呼んでた?」 歩生は溜息をついて、ちょっと来いと腕を引っ張った。
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