第三章

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「実はおじさんから聞いたんだけど、」 屋上の隅っこで、歩生は座り込むと、突然話始めた。 「聞いたって、何を?」 「おじさん、再婚するんだろ?」 奈緒は、柵に凭れて溜息を吐く。 「まだ決まってない」 「...奈緒」 呼ばれて歩生の隣に腰を落とす。 「どうでもいいけどよ、これから家を飛び出す時は、俺の家に来い」 てっきり、再婚を応援してやれとか、 ちゃんと帰って話し合えとか、 歩生が決まりきったことを言うと思っていた奈緒は、拍子抜けする。 「昨日みたいに、外でぶらぶらするのはやめろ、」 奈緒は我慢出来ずに大声で笑い始めた。 「何が可笑しいんだよ、」 ムスッとした歩生が奈緒を横目で睨む。 「何で今その話なのかと思って、」 「...仕方ねぇだろ、昨日は話す前に爆睡したんだからよ」 「へぇ、ほんとに寝てたんだ?」 「まーな」 わかってはいたけど、ほんの少しだけ、歩生が起きてたんじゃないかって、そんな風に思っていたのかもしれない。 僅かに胸が軋む。 「大丈夫。もう、飛び出したりしないよ」 奈緒は立ち上がると、制服のスカートを直した。 「じゃなきゃ、お兄ちゃんが心配するもんねッ」 舌を出して悪態をつく。 「歩生先輩、気が向いたら一緒に帰ってあげれば?」 笑ってそう言って、屋上の扉に向かった。 「おい、奈緒!!」 なんだろう。 この感じ。 こんなこと言いたかったわけじゃないのに。 歩生が傍に居たから、昨日を過ごせたのに、 最低だ。 泣きそうになって、慌ててその場を後にした。 何もかもが狂い始めている気がして、不安に押し潰されそうだった。 一人になったような気持ちに襲われ、誰もわかってはくれないなんて、子供みたいなことを考える自分が嫌いになる。 何とかしなきゃと自問自答しても、どうすればいいのかわからなくて、また、同じ場所を彷徨う。 急いで階段を駆け下りた。
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