第四章

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テーブルに置いていたスマホが震えたのを、先に気付いたのは亜美だった。 「鳴ってるよー!」 歌うことを止めた奈緒は、マイクを亜美に手渡した。 同時にスマホを受け取る。 手渡され、確認した着信履歴。 「...何で歩生?」 数十件入った着信に、奈緒は首を傾げた。 掛け直すか悩んだ瞬間、また着信が入る。 奈緒は席を立った。 部屋を飛び出し、耳にあてる。 「奈緒ちゃん!?」 その声が、歩生のお母さんだと、すぐに理解する。 「...おばさん?どうしたの?」 「奈緒ちゃん、歩生がー、」 奈緒は、夜の街を走っていた。 「おばさん?歩生に何かあったの?」 「歩生が交通事故に、」 泣き出したおばさんの言葉を遮ってまで、歩生の状況を確認できなかった。 怖かった。 「おばさん..、病院はどこ!?」 歩生、無事で居てー、 霞む町並みを見て、泣いていることに気付く。 腕で涙を拭うと、奈緒は全速力で駆け抜けた。
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