40人が本棚に入れています
本棚に追加
テーブルに置いていたスマホが震えたのを、先に気付いたのは亜美だった。
「鳴ってるよー!」
歌うことを止めた奈緒は、マイクを亜美に手渡した。
同時にスマホを受け取る。
手渡され、確認した着信履歴。
「...何で歩生?」
数十件入った着信に、奈緒は首を傾げた。
掛け直すか悩んだ瞬間、また着信が入る。
奈緒は席を立った。
部屋を飛び出し、耳にあてる。
「奈緒ちゃん!?」
その声が、歩生のお母さんだと、すぐに理解する。
「...おばさん?どうしたの?」
「奈緒ちゃん、歩生がー、」
奈緒は、夜の街を走っていた。
「おばさん?歩生に何かあったの?」
「歩生が交通事故に、」
泣き出したおばさんの言葉を遮ってまで、歩生の状況を確認できなかった。
怖かった。
「おばさん..、病院はどこ!?」
歩生、無事で居てー、
霞む町並みを見て、泣いていることに気付く。
腕で涙を拭うと、奈緒は全速力で駆け抜けた。
最初のコメントを投稿しよう!