40人が本棚に入れています
本棚に追加
「奈緒、話がある」
父の声を聞き立ち上がる。
奈緒は、立ちはだかる父を掻き分け、部屋を出た。
「奈緒?」リビングの扉を開けた奈緒は、小さく振り返る。
「話って、もしかして2人がずっと付き合ってたって話?お母さんが生きている時からずっと...」
奈緒は二人に向き合った。
言い訳出来ない人の顔は、こんな表情を向けるのかと、意外なほど冷静だった奈緒。
「お母さんはずっと知ってたんだよ。二人のことを知りながらも、小さなあたしを抱えていたから我慢したんだ。」
御守りを抱き締め、言葉を繋ぐ。
「そんなお母さんを死に追いやったのは...」
小さかったあたし?
それとも...、
奈緒は目を伏せた。こんな言葉が並ぶなんて、自分が自分じゃなくなっていくようだった。
その場に背を向けた。
自宅を飛び出した奈緒は、病院に向かうため自転車を走らせた。
思えば、全て偶然なんかじゃなかったんだ。
あれは悪夢だったけど、決して夢じゃなかった。
間違いなく今起きてることは、止められないのだから。
「それなら今度は、あの影が何なのか、絶対突き止める...」
奈緒はそう呟き、自転車の速度を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!