第六章

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「奈緒、話がある」 父の声を聞き立ち上がる。 奈緒は、立ちはだかる父を掻き分け、部屋を出た。 「奈緒?」リビングの扉を開けた奈緒は、小さく振り返る。 「話って、もしかして2人がずっと付き合ってたって話?お母さんが生きている時からずっと...」 奈緒は二人に向き合った。 言い訳出来ない人の顔は、こんな表情を向けるのかと、意外なほど冷静だった奈緒。 「お母さんはずっと知ってたんだよ。二人のことを知りながらも、小さなあたしを抱えていたから我慢したんだ。」 御守りを抱き締め、言葉を繋ぐ。 「そんなお母さんを死に追いやったのは...」 小さかったあたし? それとも...、 奈緒は目を伏せた。こんな言葉が並ぶなんて、自分が自分じゃなくなっていくようだった。 その場に背を向けた。 自宅を飛び出した奈緒は、病院に向かうため自転車を走らせた。 思えば、全て偶然なんかじゃなかったんだ。 あれは悪夢だったけど、決して夢じゃなかった。 間違いなく今起きてることは、止められないのだから。 「それなら今度は、あの影が何なのか、絶対突き止める...」 奈緒はそう呟き、自転車の速度を上げた。
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