第七章

3/8
前へ
/103ページ
次へ
「...凪野さん、ですよね?」 口火を切ったのは比内さんだった。 「今、大事な話をしてるので、後にしてもらえませんか?」 怒ったようなその口調に、奈緒は真っ直ぐ視線を起こす。 「ごめん。あたしはもっと大事な話なんだ。」命が懸かってるんだ。 絶対に退かない。 そう、ぎゅっと拳を握る。 「奈緒、どうした?」 歩生は心配そうに言葉にした。 こんな奈緒を見たことがなかった歩生の本音だった。 「比内さん家どっち?」 奈緒の勢いに二人は怪訝な表情を見せた。 「家、どっち?」 「あの、何で今それを?答えなきゃいけないですか?」 奈緒は頷くと、言葉を繋げた。 「駄目だよ。言わないと。じゃなきゃ、ずっと着いて行く」 「おい、どうしたんだよ奈緒」 その空気を察した歩生が二人に割って入った。 「邪魔する気、ないんですよね?」 「それは...そうなんだけど、」 何て言えば伝わるのか、どう説明すればいいのか、奈緒は焦り始めた。 「それなら、いいです。凪野さんも聞いててください。」
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加