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それはG?
目の前で落ちた物は、皆見たことのあるものだった。
「ここにくるたびに、一個は落ちるんだよな〜頭。」
そう落ちてきたのは人の頭だった。明るくなった今、見上げるとどこにでも頭や髪の毛、手足などが生えている。この通路はいわば肉塊で形成されている。
「頭って、ここは魂を管理するところじゃないんですか?なんで生前の体が……」
その言葉を聞くと、関宮さんは知ってる範囲でしかないが教えてくれた。でも、それが決して役に立たないかと言われると横に振れる自信はある。
簡単にまとめると、ここはゴミ処理場で魂しか保管できないのだ。ここにくると一時的に肉体を取り戻すが、脱走しないように体だけここに置いて行くらしい。魂的には、肉体と繋がってないため痛みなどはなく快適に暮らせる。
「って感じですか?要約すると。」
「とりあえずの予備知識も含んでいるが、大丈夫だ。」
本当に、関宮さんは褒めるのうまいですね。学校の先生になったらいいのにという言葉を呑み込んで肉塊の通路を歩いてく。
先が見えない洞窟みたいな感じだったが、ある程度行くと突然雰囲気が変わった。真っ白で頑丈な壁紙に変身し、人がいそうなくらいに清潔な施設と呼べる所に出た。
「よかったですね関宮さん。これで、あの虫ともお別れですよ。」
「……あいつだけは、どうしても無理なんだ。子供なら、原型がほとんどない奴を潰したけどな。」
余談として、肉塊の道を通るということは少なくとも、腐った物から新鮮な物まであるわけだ。そして腐った物には虫たちが寄ってくるので、コバエやらを思い浮かべると思うが当然それだけではなく、北海道に住んでる人以外は見たことのあるカサカサと動く彼らを目にした。
当たり前だが、ここは死者しかいない。虫でも動物でも植物でも、何らかの形で死んだ物しかいない。しかし、人間は道案内を受けるが、その他は意識の概念がないため仲間の近くに自動転送するのだ。
「思ったよりも皆、殺してるんだな。スプレー缶タイプかな?」
「いや、団子だろ。あいつら、集団生活してるし。」
まあ、わかる人にはわかるだろう。一匹いたらまだいるの考えだ。ちなみに、ここは一匹いたらもっと増える方式だが。
それは、置いといて施設にはインコの入るような籠が見える。フワフワ舞うように飛んでいるのは、綺麗な水色の魂だ。確か私の魂も水色に近い色をしていたが心が綺麗なんだろうか?
「あっ、セッキーお久〜〜」
ノリが軽そうなお兄さんが、名簿に見える物を持って走ってきた。そこまで距離がないはずなのに、触れる直前に足がもつれて転んでしまう。セッキーというあだ名でツボった私は、お腹を抱えて今にも倒れそうだが。
「馬鹿だな昭彦。名前は、厳格なのにこんなにもチャラ男とは……」
その名前で呼ばないで!と、叫んだ昭彦はセッキーに頭突きをかましていた。昭彦さんはアッキーかヒッコー、アッコーのどれかで呼びたい気持ちがある。あだ名は、名字でもいいけど。
「セッキーそこの子って……隠し子か誘拐?」
「隠し子だとしても、生まれるわけ無いだろ。ここは死後の世界なのに。」
セッキーこと関宮さんは、ヒッコーの言葉を冷静に返した。私の自己紹介はいつすればいいのかな?
「……なるほど釜山 実彩子か。新しい役人候補なのか?死因はクラスメートからの暴行。」
いつの間にか、手に持っていた名簿で私の死因や名前を把握していたヒッコー。自己紹介の事は忘れても大丈夫そうだな。
「貴方はなんて言うんですか?昭彦さん。」
「それやめてって、みっちゃん!!僕は箕谷 昭彦だよ!」
ちなみに、オススメの呼び方はミノタウロスだよ。と、ウインクしながら見てくる
みのた あきひこさんに冷たい目線を向ける。私が考えたヒッコーよりは、随分いいあだ名じゃないか。
「よろしくお願いします、ヒッキー。」
「それ絶対僕じゃないでしょ!?引きこもりでしょ!!」
関宮さんは私の頭を撫でつつ、よろしくなヒッキーと復唱した。
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