作文(案)

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作文(案)

「ふと思うのだもしもここが不思議な夢の世界で自分はまだそこにいるのだとしたら。覚めているか寝ているかわからなかったら。」 という始まりかたは本を読んでいると一つや二つある。そして今日はそこから始まる物語の感想を書かなくてはいけない。  『私は夢でも現実でも関係ないと思います。何故なら確認をするためには一回死ぬしかないと思うからです。夢はヘンテコなのが多いですがこんなに生々しい夢ならばいっそ現実でも死んでしまった方が楽になります。まあ今も十分ヘンテコだと思いますが例えば電車で10分かかる道を徒歩で行こうとすると一分しかかからなかったら?それはどんな問題でしょう。頭を使うのすら嫌になる。死』  そこまで書いた私は見回りに来た先生が目線の端に見えたので普通に紙をひっくり返した。今回はまっさらなコピー用紙を使って感想を書いているので裏面にしても問題はないだろう。まあ担任に見せてもいいのだがめんどくさいので裏面に続きを書いているように見せることにした。 「後で職員室に来なさい」  そう書かれた紙を机の上に置いて見回りを再開させた。担任が何かムカついてる事があるらしいが生憎私の頭には職員室へ向かうという行動は無いのでそうそうに帰らせてもらう。そういえば学校的にあの作文は書き直す事にした。評価に関わるし何より周りにバレれば更に厄介になるからだ。  国語が終わり掃除をあらかたしていると担任に声をかけられた。 「釜山さん今日何か用事ありますか?」 ……外側から確実に退路を塞いでいくつもりだな妻鹿悪先生。まあこっちにはとっておきのカードが残っているけど 「すいません妻鹿悪先生。私この後すぐに家に帰らなければいけないんです。」  一瞬のしかめっ面がとてもよく似合う顔だね本当からかうのは楽しいな。でもそんなんじゃ引き下がらないよね。 「10分だけでもいいんですよ。渡したい書類があるんです。」 にっこりと笑う私に怒りを隠した先生の顔は面白いほどピクピクしてた。
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