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新しい職
死神が鎌を首にピタリと当てるが、金属特有の冷たさが感じられず私は少し残念だった。生きていた頃と同じような感覚だったらば、死にたいとは感じられないと思ったのだが……期待はずれだった。それにこの男もなんだ、死神とかもう中二病のレベルだろうに相当痛い人か死んでからおかしくなったかの二択だろう。
「どうした釜山 実彩子僕のことが怖くなったか?やはり死神を目の当たりにすると震えが止まらないか。」
悪そうな笑みを浮かべる死神に私は刃物に沿うようにゆっくりでも確かに近づく。死神の顔がジワリジワリと歪んでとうとう鎌の根本まで来てしまった。特に行動を起こすことのない死神に声をかける。
「恐れおののくのはどちらのことかな?死神なんてまるで子供の」
そこまで言うと死神は意識を取り戻したようにわぁぁぁぁーーーっと叫び始めた。まさかこんな近くで叫ぶとは思っていなかったため対策を怠り、耳の中で叫び声が木霊している。驚いて鎌を振り払おうと触れると刃の部分は引っ込み姿を消してしまう。死神が私の肌から鎌をどかしたのだ。
「なんでこれで驚いてくれないんですか!?驚いてくださいよー!」
先程までの口調とは打って変わって知識が全て抜け落ちたような喋り方になっている。少し話を聞いているとどうやらつい先月来たばかりの新人らしい。先輩に鎌でも付き当てとけば何とかなると言って聞かない状態だったため実践してみたという。
「それは先輩が悪いのではなく私が一番悪いのでは?」
小さくそう呟くと突然怒涛の声が耳を貫いた。
『何してるんだ新人!さっさとその女を連れてけ!!』
死神は一つ深いため息をつくと軽い返事をした。私の方に顔を向けるとクラッカーをパンっと鳴らしおめでとーございまーーーす!と大声で言った。
「貴方は数ある魂の中で選ばれたのです!そして今日はその記念すべく日に貴方の新しい職場をご案内します。残念ながら僕とは仕事が少しだけ違うのでなかなか会うことはありませんが僕の評判広げといてくださいね?」
もしかして嫌々って感じかな。一番気になるのは「数ある魂の中で選ばれた」ってところかな。
「なんで選ばれたの?てか貴方と同じ職場だったら私何も話せなくて自殺を測っていたかも……死ねないけど。」
死神はない首を捻る動作をしてまあまあというふうに背中を押してどこかへ連れて行こうとしてる。押されてる手から逃げるように一歩前に進むと死神は目的地を教えてくれたそこは
「は?マジで言ってんの?」
私が今まで隠していた皮を破った瞬間だった。まあキレ気味になっているが仕方ないだろう。てか切れているが私は悪くない。何故なら目的地に向かっているという死神を追いながら最終地点を聞いてみたら公民館だと言うのだ。
「だってそっからしか行けないんだもん!僕はともかく先輩もその通路しか通ったことないらしいし迷うから無理!!」
駄々こねながら着いた公民館は思ったよりも子供や親が多くいた。アーチ状の看板を見かけたため浮遊して近くまで行くと
『○○公民館 光武祭り』
と書いてあった。今日は公民館でお祭りをしているためこんなに多いのか。思えば道路を整備するために何人かパイプ椅子に座ったご老人がいたな。
「それで?どこから入るのさ……その入り口とやらは。」
一様は来てみたもののそのような入り口っぽいのは無いし、霊的なのも集まってないし。死神がテクテク歩いていくとそこには両方扉を祭りのためか全開にしている公民館の正門が見える。まさかここを潜るんじゃ
「ここにさっきの鎌を当てるとあら不思議知らぬ合間に結びついた門の出来上がり〜」
どこのお料理番組だよ!そして普通に潜るのかい。でも全開になってるせいでガセなのかわかりやすいけど……信憑性にかけるよね。ほら信用できる人ならいいけどできない人だと目の前の光景を信じるのは難しいって感じの。
「あながち間違いではないのはわかったけどここに入るの?」
死神はキョトンとした顔で言う。
「入り口なのに入らないの?」
嫌だって私にはさっきまで奥の方まで覗けた入り口が鎌をガラス戸に刃先を当てると先が見えない金色の通路が突然現れたんだもん。戸惑っていいよね。死神がズンズン先進んでいこうとするのである程度の距離を保ち暫く無言で歩いてるといきなり眩しく感じるようになった。そして気がつくと私はトンネルらしき物を抜けて開けた場所に立っていた。
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