漬物日和

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 高齢の母親がーー認知症になってずいぶんになる。  どの程度の認知症なのか。自分にはわからない。そもそも、医者に診断されたわけでもない。言動がおかしくなって・・・おそらくそうだろうと思うのだ。  色々なことがあって・・・とてもいっしょに暮らしてはいられない。  自分も50代にさしかかるーーが、独身だ。  世間は独身のデメリットを指摘するかもしれないが、自分には合っている。  仕事だってそうだ。合っている。大きな声では言えない仕事なんだが。いや、だからこそなおさら。  自分の立ち位置というヤツを守るために煩わしいことには、かかわりたくない。そうあり続けたかった。だから。  父親が死んでから、母親とずっと暮らしてきた家を出た。  母親には新住所も連絡先も告げなかった。告げたところで、あの時点の母親に理解できたかどうか。  で、それから数年があっという間に過ぎたのだ。  今回、そのーー家に数年ぶりに帰ってきたのには、もちろん理由がある。  世間様から見れば。自分は自分勝手に母親を捨てた非道な息子だ。  ああ、べつだん否定はしない。  今回、戻ってきた理由もこまかく言うつもりはないがーー非道さに輪をかけると言われても仕方ないだろう。  ようするに母親が現在、どのような状態であるにせよ。家は自分にとっても資産で利用価値がある。公正証書がらみの用事が自分にはあるのだ。  地元にいる悪友とは連絡をとり続けていて。母親がまだ生きてーー家にいることは分かっている。  あるいは介護サービスのたぐいを受けている可能性もあるが、寝たきりというわけじゃなさそうだ。  自分にとっては都合がいい。  そうして、さっさと用事をすませてひきあげたいものだ。  お涙頂戴の再会も、罵声の応酬という流れもごめんだ。  
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