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いつも、あめのひ
万雷の拍手に包まれた屋敷から、逃げるように僕は飛び出した。この時期には珍しい雷雨の日だった。世界にふたをするように重くのしかかる黒雲の下、人の過ちを責め立てるように降りしきる雨に打たれながら、あちこちで轟く雷に急かされ、僕は走った。
どこへ行こうともなく。
いつも、あめのひ
少年がたどり着いたのは町のはずれの高台の上。そこには、この小さな町には似合わない大きな大きな杉の木があり、少年はその幹に寄りかかって身を休めることにした。少年はどこかに自分の居場所を探すように、ただただ虚ろな目で眼下に広がる小さな町のようすを見ていた。飢えた猛獣の唸り声のような雷鳴の直後、町から光が消える。少年は心地よさを感じていた。すべてが呑み込まれ一体となったかのような闇の世界に、居場所はきっとあるのだと思った。
「こんなところに人とは。」
世界の一瞬の静寂の中で、いつの間にやらやってきた女性は杉の木にもたれかかった無気力な男に声をかけた。
「・・・・・・」
「無視か。疲れてるね、君も。」
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