ようこそ、山と湖の町へ

4/8
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/161ページ
「ここって、アルコールも出すんですか?」 隣に座るキャスパの頭を撫でながら珈琲が入るのを眺め、ふと聞いてみた。 「どうして?」 マリアさんは珈琲を淹れる手を止めて、不思議そうに返す。 「いや、だって.....」 だって、カフェなんでしょう?と言おうとしたら。 「アルコールは無いわよ。 日本人に、サロン・ド・テは馴染みが無いでしょ?」 「だから、カフェですか…」 「まっ、そう言う事。 日向くんて、面白いのね。 さっきも、キャスパって聞いて魔法の7柱なんて。 中々、思い付く人は居ないわよ」 「キングオブスコッチ、酒好きなら知ってるんじゃ無いですか?」 「ないない、バレンタインは知ってても、どこのスコッチをブレンドしてるかなんて」 珈琲を置きながら、可笑しそうに笑う。 カップを取って一口、珈琲の良い香りが鼻を抜け口に含んだ液体と結びつき、酸味と苦味、微かな甘みが味覚を目覚めさせる。 「あー、美味い」 思わず、ため息の様に漏れた。 「ありがとう。 この店自慢の、ソルシエールブレンドよ」 「魔女?」 やっぱ魔女なんだ。 「あらぁ、それはナイショ」 言いながら、クスッと笑う。 も、もしかして、天然? 自分でソルシエールブレンドって! そもそも、カフェ・ソルシエールマリアって店の名前は、日本語にしたら"魔女マリアの喫茶店"なんですけどね。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!