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ガーリック魔王の真相
〇×不動産、賃貸管理部。
同日、時刻は午前九時、事の始まりは朝に遡る。
――くっせぇ。
デスクで不快感あらわに顔をしかめる我里久。社内で魔王と恐れられる男だ。
書類に目を通している振りをして、メガネの奥から睨めるようにギョロリと視線を左へ移す。
その視線の先、左隣のデスクに座るのは我里久の部下――志賀がパソコンで書類作りに勤しんでいた。
大抵の新入社員は我里久の厳しさに耐え切れず一ヶ月以内で辞めてしまうが、志賀は
二ヵ月、生き残っている。
頑張って魔王に立ち向かう彼を称え、密かに社内では『勇者』と呼ばれていた。
だがそんな勇者から強烈な口臭――タバコ臭が吐き出されており、我里久の鼻腔をつんざいていた。
朝の清掃活動を終えた後の一服が、口に残留した状態で席についた志賀。
志賀が呼吸するたびに漏れ出る毒ガスによって、我里久のHPは削られていく。
なるべく匂いをかがないようにしようと息をひそめる。
が、それも長くは続かず、毒ガスを吸うはめになる。
地獄に叩き落すぞ小僧――そう我里久が憎悪に胸を焦がしたその時だった。
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