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「あの、部長……」
「な、なんだっ?」
突然呼ばれ、狼狽する我里久。そんな彼に気づかず、志賀は口を開いた。
「この前契約したお客さんの名前ってこれで合ってますか?
入金方法は振替で……? 振替って何ですか? 振込?
え、振替と振込って意味が全然違うんですか?
あと、どこに印鑑押せばいいんでしたっけ?
領収書には収入印紙を貼らないといけない……?
収入印紙って何ですか? え、切手と似てるけど違うんですか?
これが税金? なんでです? そんなルールがあるんですか?
初めて知りました……それとこっちは――」
などなど質問攻めする志賀。
対して、志賀からの毒ガス攻撃を必死に耐えつつ、懇切丁寧に教える我里久。
HPが半分ほど削られたところでようやく解放され、トイレへ避難。
洗面台の縁に両手をつき、鏡の前でがっくりとうな垂れる我里久。
――これも因果応報ってやつか。
ふっ――と自嘲を含ませて口元を歪ませる。
そんな彼の脳裏にある出来事がよみがえった。
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