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勇者VSガーリック魔王
〇×不動産、賃貸管理部。
マンション・アパートなどの賃貸物件を仲介・管理する、社員十人ほどの小さな会社。
時刻は午後一時、昼休み明けに事件は起きた。
――くっせぇ。
デスクで不快感あらわに顔をしかめるのは志賀勇士。まだ役職はない、入社して二ヶ月の新入社員。
パソコンのキーボードを打つ手を止めずに、志賀はチラッと目線を右隣へ移す。
小学校の教室のように二人横並びで座るデスク配置。
志賀の右隣席には上司の我里久真雄。
志賀が作成した請求書に目を走らせて間違いがないかチェックしている彼は、入社して
二十年以上の経歴、役職は部長。
腹の底まで冷えるような鋭い眼光をメガネの奥から放つ険しい面持ち、そして全身から立ち上る気迫。
ズバズバと舌鋒鋭く指導するため、過去、逃げ出した新入社員は数知れず。
いつしか社内でも畏怖される存在として彼は『魔王』と呼ばれていた。
そんな魔王から異様なほどまでの口臭――にんにく臭がしていた。
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