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鈴木の幸せ
「どうしたものかな」
何が彼を悩ましているのか知らないが、特に気になりはしない。
辻さんは好きな相手でなくても優しく抱いてくれるタイプの人だ。
壊れ物を扱うように、と言う程ではないが寂しさを埋めてくれる程度には優しく扱ってくれるし、私はそれに十分満足している。
私を抱く男が発する、呻くような低いこの声が好きだ。
私を抱きしめる逞しい腕や、筋肉のついたたくましい胸板が好き。
私が愛したあの人とはかけ離れた声に腕に胸板。
嗚呼、私は幸せだ。
私が愛したあの人と似ても似つかない男達に抱かれて本当に幸せだ。
辻さんは愛した人をどんなふうに抱くのだろう。
私を抱くよりも、もっともっと優しく体に触れ、愛すのだろう。
私よりも愛されているであろう存在すら知らない誰かに嫉妬する。
でも、難しいことを考えずに好きなように抱ける私は辻さんにとって必要なはずだ。
そう考え、少し優越感に浸る。
ーー明日は誰と夜を過ごそうかしら。
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