私は幼馴染みにとって百円の価値らしい

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カラカラと、後ろから自転車の車輪の回る音がする。 「硫、学校行くんじゃないん?」 「何でやねん。……迎えに来たんやろ」 ぴたりと足を止めて、振り返る。 「なんで?」 「……今日、告白するって言っとったから。どうせフラれるやろなぁ、と思って」 睨み付けるも、そこまで悪い気はしない。これは硫の照れ隠しだ。心配して、わざわざ来てくれたのだ。意外と格好良いとこあるじゃん、と思い、じんわりと心が温まっていくのを感じる。 「ま、それだけじゃないけどな」 「えっ?」 自転車を押しながら、硫は私の横を通り過ぎて行く。何故か早足になった。 「こーゆうときに優しくしたら……いー感じやん」 「意味わからん」 涙はいつの間にか止まっていた。 「だからさ、アレや」 「ん?」 「百華は、俺にとっての百円玉みたいなもんやってこと」 はぁ? と言いかけて、やめた。すぐに、その意味に気付いてしまったから。 「……まじ?」 「おう」 横に並んで顔を覗き込んで見ると逸らされた、けど、しっかりと耳は赤い。 さっきまで泣いていたことを忘れてしまいそうな程の衝撃が、全身に走る。 夕陽が照らす帰り道、親しみ慣れた隣を、初めて緊張して歩いた。 「ていうか、傍から見たら最低な告白やったな」 「うっさ」 チャリ、チャリ、と硫のポケットの中でコインの擦れる音がする。昔から一番のお気に入りのそれは、今どれくらい貯まったのだろうか。
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