第二候 黄鶯??v(うぐいすなく)

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第二候 黄鶯??v(うぐいすなく)

*清花=中学3年生前、舜一郎=大学2年生前 「……私、今日までメジロのことを鶯だと思っていましたわ」 喫茶店でラテを飲みながら清花が言った。その喫茶店は日替わりの手作りスイーツが売りの人気店だ。 清花の言葉を聞いた舜一郎の目が瞬いた。 「それで今日はしょげていたのか?」 「だから私、色も勘違いしていたんですの」 清花は視線を落として帯留めをちらりと見た。帯留めは蜻蛉玉。その色は抹茶に黄色味を含ませた色をしている。 「色?」 舜一郎は立ち上がって帯留めの玉を見た。 舜一郎が「ああ……」と頷くのを見ると清花はますます項垂れた。舜一郎は心中で慌てた。メジロと鶯を混合するのは大人でもするのだ。まだ13歳の清花が無知と落ち込むのは性急過ぎる。 「清、落ち込まなくても良い。そもそも鶯は鳴き声はあれだけ目立つが、臆病な性質だから姿は滅多に見せないし、蜜よりも虫の方を食べるから梅の木にはあまり止まらない。それに対してメジロは花の蜜が好物だからしょっちゅう梅の木には止まる。間違えても不思議じゃない。それに……」 「……それに?」 「知らなかったなら、これから覚えれば良い。知らないことがあれば俺がいくらでも教えてあげるよ」 「まぁ」 清花が笑った。花のような笑顔だった。「舜一郎さん、お優しいのですね」 清花の言葉に舜一郎の目が細くなる。清花はその一瞬の変化に首を傾げた。舜一郎は清花の頬に手を伸ばした。 「俺は他人に優しい性格(たち)じゃない」 舜一郎の手が清花の暖かみのあるすべすべした頬に添えられ、愛撫するように撫でていく。清花はうっとりした表情でその手に自分の手を重ねて身を任せる。「でもお前は惚れた女だから優しくしたい」 「まぁ、嬉しい。私も舜一郎さんのことがとっても大好きですわ」 その瞬間、その席の周辺でフォークを置く音が相次いで響いた。 その日、ケーキの売り上げは平均売上数を大きく下回っていたそうだ。
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