四章

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その後朝一で通りすがった小さな個人医院の医者を宥めすかし、応急処置だけしてもらった。 「それでいいの? 私みたいにしっかり診てもらえば良かったのに」 トラックの助手席にて、脚に包帯を巻いたルイーズが尋ねる。 「お前が手当てするんだろ」 彼女と生きるのに、こんな世界に身を置く必要は無い。俺はさっさと国を出ることに決めた。 「日本でいいか? 少なくともこの国よりは平和な国だ」 もっとも、裏の世界は変わらないのかもしれないが。 「言葉が喋れないじゃない。私もシャンも」 「どうにかなるだろ」 島国とはいえ先進国だ。英語が解る人間がいない筈はない。 「なるかしら」 ふふっとルイーズが小さく笑う。 「ところで、どうしていつも私にそこまでしてくれるの? 私はシャンの人生に足手まといかと思ってたけど」 本気でそう思ってるというよりは、茶番のような会話を楽しみたいようだ。 「そんなことないから取り返しに行ったんだろ……言い忘れたこともあったからな」 「なになに?!」 彼女が身を乗り出す。薄墨色の瞳の輝きから鑑みるに、察しはついているのだろう。 なんせ人生で初めて言うのだから、言葉にするには時間が必要だ。 「……100分したら言ってやる」
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