一章

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彼女と暮らすようになって一年くらい経った頃、俺は任務でアジトを離れていた。帰りの車で完了報告をしようとするが、上司にいくら掛けても電話が繋がらない。何か突発的な仕事でも命じられたのかと思っていたが、同僚からの着信で全てが解った。彼は俺が電話に出てすぐに話し始める。 「シャン、アジトが襲撃を受けた」 「……何だって?」 「ケイズリー社だ。アジトは半壊状態、死んだのも大勢いる」 ケイズリー社はうちより大規模なマフィアだ。先日資金源の武器会社を一つ潰したから業を煮やしたのだろう。 俺の声が痙攣した。 「ルイーズは……?」 「お前の人形なんか知るかよ。ボス夫妻と幹部連中は何とか隠れ家まで逃げたが、俺たち十把一絡げは取り敢えずどこかに身を隠せとさ……あっちのボスは女狂いだ。多分、『玩具』の類は連れて帰られてるよ」 死んでないのが救いと言うべきか。 「……くそっ!」 勢いで電話を切ってしまうと、隣の部下が青い顔で問い詰めてくる。 「嘘だろ……アジトが襲撃って、俺たちどうすれば……」 狼狽えるこいつは、役に立たない。 「運転を代われ」 「は……はいっ!」 部下が車を降りると、俺はそのまま運転席に移る。 「……悪いが死んではくれるなよ」 俺は彼の姿すら見ずにそのまま、アクセルを踏み込んだ。 行き先は言うまでもない。
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