11−4

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「──あき?」 「横にするだけ。こんなことで怖がんないでよ」  鋭いねー春真。そういうところ侮れないよ。  ニセ紳士はもう終わりだから、まあいいけどね。 「な……これ横、とか……じゃないだろ……秋、彦っ」 「あーうん。身体で拘束的な?」  仰向けの腰をかなり高く上げさせて、  脚の間に入ったオレが上半身で乗り上げて、   それだけなら有りがちな体位だけど、二の腕を上から押さえつけてる。  オレの身体でホールドされて春真は身動きが取れなくなった。  いい具合にえげつない絵面だよね。 「離……せ、よ──っ」 「うーんダメ。全部押さえ込まれて、ちんこで(はりつけ)られて、お前はオレに種付けされるの」 「──っ、や……だ!」 「もっと嫌って言って。もっと、感じすぎてアタマおかしくなるから嫌だ、って」 「や、やぁ……っは、あ、き──っ」 「うん──暴れても動けないでしょ」  できたら一度は気が狂うほどの快楽って、与えてみたいよね。  そしたらお前どうなるんだろ。  だから、ゆっくり、ゆっくりね──挿れてあげる。  間違っても勢いで入らないようにしないと。ヌルヌルだからね。  ほら、オレの先端が、じっくりと肉を抉じ開けてくところ……感じてよ。 「あ──んっ、う、や、やっああんっ」 「すっごく悦いんだよね。ほらこれ分かる?  オレがブレーキ掛けないと飲み込まれてっちゃうよ。  相変わらずやらしくて淫乱な孔だな……」  根本まで挿れるのに、たっぷり5分は掛けたよね。  キツい?キツいよオレも。  ただでさえグッチャグッチャに腰振っちゃいそうなのに  止まっててもお前の中が勝手にうねって締め付けてくるから  ずっと気を張ってないとダメじゃん。見てこの脂汗。 「っあ、は……あき……くる──し」 「ああ──やっぱり苦しいのかこれ。でもこのままだよ。お前はね、オレから逃げられないの」 「そん、なの……!っく、やあ、あきぃ……っ!」  キツ……千切れるって!  あー束縛系のワードにも弱いんだ……。  考えてみればそうだよね。強引なの好きだもんね。  でもオレが動いたわけでもないのに、これだからね。  居るよ?オレ以外にもこういうこと簡単に言う奴って。  あんまり男には使わないかもしんないけどさあ……、  おまえ、簡単に引っ掛かったりしないよな?  ああほら、こうやって容易くオレを動揺させるんだよお前はさあ。  まあ──お蔭で、迷ってた切り札使ってやろうって気にはなったけどね。 「動くよ」  こんなゆっくりのストローク初めてかも。オレ史上初。  ガン掘りも鬼畜だと思ってたけど案外、逆じゃないの。  だってこれ──滅茶苦茶やらしくない? 「んぅっ、あー……すげ……」  なぶるみたいにジワジワと貫いて突き当りでさらに押し込んで。  腰振る代わりにその場で回すの、震えが来ちゃうくらい良くって──。  引き抜く時はお前の中が縋り付いてきて──。  肉壁の黄泉比良坂(よもつひらさか)かと思ったよね。追いかけてくる感じが。  フザケてない……気を散らしてないと一瞬なんだって。  は、くっそ──。  抜き差しがスローで重たい分、軌道上で感じる感覚がダイレクトにくるじゃん。  いっちいち快感がどこにキてるか、確かめながら動いてることになるんだよ。  お前も思ってるでしょ。イくまでコレ続けたら軽く狂えるって。  このまま狂っちゃったら、それはそれで楽しいかもなあ。 「ぅ、っ──あき、んっ──もち、い……」  春真が素直だ。だいぶ意識とんでるね──。  じゃあその朦朧(もうろう)としてるところに、  信じられないこと言ってあげるから、よく聞いといて。 「春真」 「ん、んぅ、秋彦──?」 「愛してるよ」 「────っ!」  返事はさせない。  一気にペース上げたから、言いたくても言えないだろうけど。  オレのはあくまでセックス中の戯言だからさ。  お前は正気の時に、死に物狂いで伝えてこないとダメなんだよ?  とかもう、考えてる余裕まるでない、けど。  お前を穿(うが)つオレ自身が感覚の全てで、それを貪ることしか考えられない。  肉体も精神も細胞もみんな欲と快楽だけに侵食されてる。  全部──お前の何もかも、オレに差し出せよ。  人生の半分をオレに向けてた執念でオレを喰らい尽くしてみろよ。  お前が欲しいのは、この一瞬だけなのかよ。  オレの下で自由を奪われてるお前は──  オレの所有物みたいに見えるのにさ──。  オレか、お前か──どっちがより深く囚われてんの──。 「ぅあ、あっあき、激し──すぎっ、あ、ひっ……も、ダメだ、オレ──」 「ん、んんぅ、っは、──好きだ──春真──」  なんだオレ今…………無意識に。  あーすげダメだ。頭真っ白、今度こそ何も考えらんない──。  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  あれはさあ、用意した言葉じゃなかったんだよ。  春真は違いがあるなんてことは知らないから、わざわざ訂正したりしない。  オレにしたってそう。  計画のために使った言葉だと思って、深く追求しなければ──心の平穏は保たれる。  うん、そうだよ。それでいいじゃん。 「……こ──秋彦っ」 「ん…………どした?」 「いい加減……苦しい、離せよ」  あれ。そう言えばいつからお前のこと抱きしめてんの。  なんか腕がギシギシいってる。こんなに強張るほど力込めてたんだ。 「ごめん」 「──おまえ最後の何アレ、凶暴すぎるだろ。いつもだけどさ──これ以上、変な性癖に目覚めたらどうしてくれるんだよ」  え?ツッコミどころそっち?  愛の囁きはスルー?  まあ……今そこ責められても上手い言い訳もできなかったか。 「痛くしたり、した?」 「──体中痛いよ。慣れたけど……何だよお前。ほんと今日ヘンだな。もういいから先にシャワー浴びてこいよ」 「春真が先でいいよ」 「オレはしばらく動けないんだよ」  ……これさあ、なんか春真に気を使われてるよね。  生意気だよね。春真のくせに。 「春巻き」 「…………ふざけんなよてめえ」  ひどい。口悪すぎ。懐かしい学生時代のあだ名じゃん。  そう呼んでたの、オレだけだけど。  まあ嫌そうな顔見れて、よく分からない鬱憤は晴れたしいっか。 「──秋彦」 「うん?」 「おまえオレをどうしたいの」  お、春真からの直球キタ。  だからダメなんだって。  それはお前から言わなくちゃ。 「え。再ラウンドのお誘い?どうされたいんだよエロ巻きは」 「はぁ……訊いたオレが間違ってた」 「あはは。じゃあシャワー行ってくるね」 「勝手に行け」  順調に意識してるのは分かるんだけど。  後ひと押し……いやそうでもない?  うーん。どうなのよコレ。
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