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 網代の視線がオレの頭の上を、  いや背後か……見てる。  そう思う間に立ち上がった網代がスタスタとオレの横を通り過ぎる。──振り返るとすぐ後ろまで来ていた春真の身体を抱きとめている所だった。 「春真!?」 「日永さん大丈夫?」 「すみ──ません。  結構足に、きたみたい……」 「気にせず僕に掴まって。だけどそんな様子じゃ君が心配だな、良ければ帰りは送ろうか」 「そんな、だいじょぶれす」  春真ろれつ!かわいい場合じゃないだろ!  網代も──いくら酔っててもオレが居るのに春真が送ってもらうわけがない。そんなことも判らないあんたじゃない。  つまり今オレ、煽られたんだよね。  オレ焚き付けたって何もあんたの得にならないでしょ。それも自信から来る余裕って言いたいの。  ああもう腹立つ──勝手に格の違いを見せつけてる気になんないでよ。 「春真──おいで。帰るよ」 「日永さんはまだ辛いんじゃないかな。もう少し休ませてあげたら?」  それはいいけどさ。いつまでもあんたが春真を抱きかかえてるのが良くないんだよ。 「……どうする?春真」 「ん。かえる」 「じゃあこっち来なよ」 「ん。────?」  春真が来ない。  厳密には網代の手が腰に回されて動けない。  振り返って見上げる耳元に網代が何かを囁いて──春真は息を止めて目を丸くしている。  なんでオレはこんなの見せられてなきゃ、  いけないわけ? 「春真」  腕を掴んで強く引っ張った。  よろけながら春真の身体がオレの元に来る。 「日永さんが悪くないのは判ってるだろう。  乱暴は良くないよ」 「あんたが離さないからでしょ。  春真になに言ったんだよ」 「──秘密、と言いたいけれどね。君、日永さんを折檻してでも聞き出しそうだしいいよ、おしえてあげる。僕ならもっと優しく出来るし大事にしてあげるって言ったんだよ」  なにこの自信家。ヌケヌケとよく言うよね。  いかにも春真の欲しがりそうな言葉を吐いて聞かせたんだ。  マジで一番相手にしたくないタイプだな。  こんな時じゃなければ、かなり気の合う人種に違いない。だからこそ──自分を見てるみたいで寒気がする。 「言いましたよねオレ。  信用できない人間に任せられないって」 「観月さんの信用は必要ないんじゃないかな?  僕と日永さんで築いていくものだよね」  くそ、通用しない。  いっそ春真はオレのもんだって言い切ってやろうか。  そしたら網代は掌返してあっさり手を引く。  見苦しい事や無駄な労力を何より嫌うから。  それも判ってんだよ。 「網代さん……オレ、気分があんまり。  もうこれですみません──秋彦、帰ろ」  酔っぱらいに空気読まれちゃったよ。  でも網代もバツの悪い顔してる。  ざまあみろ。 「無理に飲ませたようで済まなかったね。後は僕がやっておくから気をつけてお帰り──二人とも今日は楽しかった、ありがとう。またいずれね」  最後まで油断のならないやつだな。  いずれなんてあったら堪んないよ。
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