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「春真はい水」 「ありがと。もうオレ──平気だから」  電車はダルかったからタクシーで春真の家まで戻ってきた。ソファーに座らせた春真もさっきよりは酒が抜けてるみたいだな。 「あいつさあ──」  うわ。口開いただけでビクってなるのやめてくんない。  地味に傷付いたよ。  別に怒ってないじゃんオレ。 「ごめん。秋彦に迷惑かけて」 「は?迷惑?」 「うん──網代さん、知り合ったのつい最近なんだ。話したのだって数回しかない。だけどなんか──親切すぎると思って、深く関わる気は無かった。今日も断るつもりで友だちと会うって話したら、ぜひにって言われて──秋彦が居てくれるなら良いかなって。でも都合よく利用したみたいになってごめんな」 「まあ、めっちゃ牽制はされたよね。  お前がトイレ行った時とかすごかった」 「──ホント悪かった。  秋彦はそんなんじゃないのにな」  オレさあ怒ってなかったよ。  怒ってなかったんだよマジで。  でも今──猛烈に腹が立ったよ。  だってムカつくよね。  なんなの。  迷惑とか利用とか。  挙げ句、そんなんじゃない?  じゃあオレはなんだよ。何のつもりで呼び出したんだよ。オレのこと恋人だって網代に紹介するくらいしてから、利用なんて抜かせよ。  遠慮からくる言葉なの?  程がありすぎてむしろ他人行儀だろ。  なにをお前は勝手に諦めてんだよ、こんなの告白どころの話じゃないじゃん。 「もし今日、網代と二人だったらおまえ食われてたよ。オレ呼んだのは間違ってない」 「ありがとな──でもオレ、あの人と二人でなんて会わねえから」 「はっ、なんでそんなこと言い切れる?あいつが簡単に引き下がると思うの。どうせ連絡先も知られてるんでしょ」 「それは──」 「網代はさ、春真の喜ぶ事くらい、いくらでも簡単に言えるしやれるよ。居るんだよそういう奴。ちゃんと拒めるの?オレの目の前で抱えられて硬直してたくせに。分かってんのかよ、あいつはお前とヤりたいんだよ」 「そんな、こと」 「ないわけないだろ」  網代から見たらお前なんておやつだよ。おやつ。ちょっと押したら落とせそうだもんな。実際、強引にされるの超弱いじゃん。 「ねえ春真、オレが言ったこと覚えてる?不特定多数を相手する奴とヤりたくないって、あと恋人もずっと作んないでって言ったよね。だからおまえ抱いて良いのはオレだけでしょ。でもさ──お前は本当に自分の身、守れんの」  網代を追い払う事自体は簡単だよ。後ろから睨み利かせる存在が居るだけでいいんだよ。はっきり相手がいるって分かれば興味無くすのは目に見えてる。本気じゃないもんあいつ。  もちろんお前一人じゃ出来ないけど。 「また飲みに誘われたらオレを呼ぶのは構わないよ。何度でも行ってあげる。けど完全に諦めさせなきゃ同じなんじゃないの。必ずオレが間に合うとは限らないし、今のままじゃ守ってやるって言い切れないよ。だってオレは『そんなんじゃない』からさ。網代も言ってたよね、オレの信用は必要ないって。要は部外者ってことだよ。春真も聞いてただろ」  ……俺も焦ってんのかな。  でもかなりハードル下がったでしょ。  先回りしてOKしてるのと変わらないんだよ。流石にわかるよね。  オレにどうして欲しいか、言ってみなよ。
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