6人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
明日こそは、明日こそはと思い続けもう何年経っただろうか……。
まだ俺はやれる、一般的な「日常」に戻らねばならないと思い、毎朝決まった時間に起床する。体は酷く怠さを感じ、眠気の取れない頭で着替える。そして部屋から出ようとドアノブに手をかけたところで、冷や汗・目眩・心拍数の増加・大量の汗・そして猛烈な吐き気に襲われ、ドアの前でしゃがみ込む。
そのまま死ぬんじゃないかという思いと戦っていると、俺のいる二階へと階段をゆっくりと登る足音が聞こえてくる。その足音が部屋の前まで来ると、毎日決まったセリフがドア越しに聞こえてくる。
『優ちゃん、ご飯置いておくわね』
声の主は母親だ。その声を聞くと少しだけ症状が治まり、そして今度は情けなさや、どうしようもない不甲斐なさに涙が止まらなくなる。
これが俺の、一般的ではない日常だ。いわゆる引きこもり、しかも俺の場合は社会問題になっている高齢引きこもりだ。
そこそこ裕福な家庭に生まれ、今で言うリア充という青春時代を過ごし、難関大学へ入学。そして誰もが知る大手企業に入社し、人生を謳歌するはずだった。
あいつと出会うまでは。
最初のコメントを投稿しよう!