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小児病棟の一部屋では、多くの子供達が眠っている。夜間、私は一人一人の寝顔を見ながら、ゆっくりと歩いていた。
「ご苦労さま」
振り返ると、かつて友達だった者が、そこに居た。突然現れたから驚いたものの、私は無表情で見つめ、今はもう同じ世界にいない彼を少しだけ哀れみ「どうも」とだけ言った。
「相変わらず感情のない奴だ」
「……面に出にくいだけ」
視線を子供の顔に戻す。
月明かりがリノリウムの床を照らしていた。静かな沈黙が流れた後、「そっちは楽しいか?」なんて彼が言うので、思わず笑ってしまった。
「そっちの世界よりは、随分と」
「だろうな」
ふぁ~と欠伸をした彼の顔は、相変わらずに間抜けだった。
「お前も早く、こっちに来いよ」
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