彼女の日常 4-1

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彼女の日常 4-1

 神月空は死神だ。人間と言う括りには存在しない。  だけど……。 「おい、コレとコレは……なんか」  レジの前に睨み付けるように立つ柄の悪い、これまた年寄りの男性。その男性 年寄りは段ボールに入った商品とペットの餌らしき缶を交互に見せながら聴こえ にくい声音で怒鳴るように告げてくる。  その為に。 「あの……もう一度言ってくださいますか。聞き取れなかったので」  神月空は内容確認の為に言葉を言う。そう、ただそれだけだったのだ。なのに。 「お前は馬鹿か? コレはコレの中には同じ物が入っとるのかと聞いとるんだッ」  聞き返せば怒鳴るように言葉を発せられて肩を神月空はビクッと揺らした。死神 であろうが元は人間、恐怖は感じる。だが神月空はこれ以上関りたくない為に聞き 取れた言葉の意味で行動に移す。だけど、男性の睨み付けるような瞳と怒鳴られた 為に脳内がしっかりと働く事はなく、疑問に思った事があっても言葉を口に出せる 訳はなくて。 「あってます」  ……多分。とそんな事を口には出さずに答えてしまったのだ。  その言葉を聴いた年寄りは満足したのか用が済んだとばかりにばら売りであろう 品物はいらないとばかりに渡して会計を済ませろと言うように急がしてくる。  その時に年寄りの男性の後ろに並んでいた別の客が自分の事を憐れそうに見ていた 事に気付いた。神月空はそんな表情に特に何も返さずに業務を行う。そして帰った後 ろ姿を見届けた後にホッと息をついて、作業業務を終わらせる。 「……なんなの。あの年寄り。自分より年齢が低そうだからって何しても良いとでも 思ってるの。とっとと地獄に落ちてしまえっ」  神月空はイライラする感情に身を焦がしながら黒い手帳に文章記入して怒りに任せ てバタンと閉じる。 「何で神様が死神を店員として過ごさせるのか理解したわ。コレが一番、人間の人格 が分かる。店員は言わば客より身分的に言ったら下の存在だと思ってる人が多いもの ね。でも」  お前ら、店員が居なければ欲しい商品とか買う事なんて出来ないんだからなッ。  神月空は客の姿を目を左右に動かして心の中でビシッと指差して告げた。  そんなイラついた状態で居た神月空の下に。
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