彼女の日常 4-1

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 神月秋を黙らせた神月空は持っていた店専用の機械で連絡する。だけど、またしても プルルと空しい音が鳴り響くだけで返ってくる声は無かった。その間にも脳内お花畑の 客は神月空の間を嫌味を言いながら通り過ぎていく。 「空、あの客はもう別の店員に聞きに行ったみたいだ」 「え……そうっかぁ。嫌だなレジに戻るの。あった時にレジ通るだろうし」 「あったらね。でも、残念だけど空のレジに来ることはないよ。目的の物は店には 存在しないから。アレが欲していたものは別の畳。空が思っている品物ではないよ」  神月秋が泣きそうな表情で立ち竦んでレジの方に戻るか戻らないか考えているで あろう神月空を見て告げた。その言葉にパチっと目を瞬きする神月空を面白いもの を見たように笑った神月秋に神月空はムッとした表情で見た。 「何で秋君が分かるの。どんな物か正確に伝えて無かったよアレ等は……」 「オレぐらいになったら人間の考えている位わかるの。店員の事をどう思ってるの とか何を考えてるとかね。だからオレは新人死神の神月空と違って店とかに潜入して 調査しなくてもいいんだよね」 「便利な能力だね」  言葉にして伝えなくても相手の伝えたい事が分かる。神月空は欲しいなと感じた。 それなら色々と先回りして対策が取れるのにと思ったからだ。 「だろ。あ、そうだった忘れる所だった。空、今から天罰を与えに行こうか」 「……はぁ?」  神月秋の突然の言葉に驚きを露わにする神月空は何か言葉を紡ごうと言葉を発する が、どれも音になる事はなかった。 「死神が記した評価で半分以上が地獄に堕ちた場合のみ新しい仕事が追加される。そ れは拒否権はあるけれど、ねぇ空。酷い行いをする人間が罰を受ける瞬間を見たくは ない?」 「すっごく見たい。でも今日の分の仕事が終わったらでいいかな」 「あぁそれで構わないよ。空が傷つく事はもう今日はないだろうからね」  神月秋は背を向けて歩き出そうとする神月空の後姿に軽く手を振りながら告げる。 それに対して。 「じゃあ終わったら」  そう返した神月空の表情は明るい。だけど、その表情を見届ける者は いなかった。
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