3人が本棚に入れています
本棚に追加
/186ページ
伯爵4
「鼠小僧と総司はこちらに来てくれ?」
伯爵が戻って来て机に座る。
「今から出かけるから付いてくるのだ」
伯爵と出掛けるのは初めてのことだ。明治の街中を歩くのも初めてだ。和洋折衷の人達が混じりあっている。そういう中ではジーパンにTシャツの私と侍の総司も不思議には映らないようだ。人力車に乗った伯爵の後を1時間歩くと洋館の建物が出てくる。広い庭を抜けると立派な玄関が出てくる。
伯爵は慣れているようでドアを開け廊下を地下に降りて行く。͡この地下のドアでは伯爵がノックする。するとゆっくりドアが開く。
「ようこそ」
と握手をしてくるのは1,8メートルを超える白髪の外国の老人だ。
「この二人が?」
「そうです。彼らはトラベラーです」
と言ってから伯爵が、
「ウィリアム候はイギリスの代表で来られている。であるが本来博士として付き合っている。トラベラーを研究しているのだ。源内から聞かなかったか?」
博士は分厚い本を出してきて開いてみせる。伯爵は横文字を読めるらしく頷いている。
「確かにトラベラーは数は多くないがいるのだ。ただこちらから向こうに行くことには成功してません」
と言いながら博士は二人の体を眺めまわしている。それから英語で話す。
「どうかな?」
「難しい?」
「鼠小僧は従順ですが、総司は難しい」
と手を上げて答えて伯爵がこちらに向いて困った顔で言う。
「二人に裸になってほしいと言われている」
総司の表情が険しくなっている。胸元に手を突っ込んでいる。
「刀三昧は駄目ですよ」
すると総司がすらりと着物を脱いだ。胸が膨らんでいてあるべきものがない。女だったのだ。私も慌てて裸になる。博士はさして驚くふうでもなく体中を調べまわる。
最初のコメントを投稿しよう!