121人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
“モブ女はイケメン主人公と付き合ってはならない“
それがこの世界の規則だと認識したのは、何度目かの死亡フラグに殺されそうになってからだ。
『イケメン彼氏が出来ました宣言』はモブ違反に相当するのか、朝からちょいちょい事故に遭い、モブオジサンに体当たりされたり、大型犬に追いかけられたり、不良に絡まれたりと災難続きだった。そして、まともんに話し掛けただけで、野球ボールが窓を突き破り私に直撃……を神反射で避けたが、更にテニスボールが追撃して来たときには、この状況の意図を理解した。
モブ役に徹しなければ、強制退去処遇。転生させてもらえる保証もナッシング! ならば叫び散らす日々の方がマシである。
「藻部、今日はローストビーフに挑戦しようと思ってる」
先程のボール連投事件に言及する事なく、呑気に料理の話に花を咲かせるまともん。
降り注いだガラスの破片を払い落としながら、“私達、もう別れましょう”ときっぱり伝えた。
「藻部の家に大きめの鍋ってある?」
……聞こえなかったのだろうか。まともんはローストビーフで頭がいっぱいなのかもしれない。
「まともん、昨日の彼氏彼女の契約は白紙にしよっか! 今から私達は単なるオトモダチ! では、イケメンをもてはやす任務があるからグッバイ!」
今度は腹の底から声を出して、ハッキリくっきりお別れ宣言。モブ顔でもまだ死にたくないの。だからごめんなさい。ローストビーフはお母様と作ればいいと思う。
颯爽と廊下に向かい、仕事に励もうと深呼吸をする私ーーーーの手を力強く握りしめたまともんは、『冗談だよな藻部?』と微笑んだ。
「まだ“何も“やってないだろ?」
死亡フラグよりも先に、静かに怒るまともんに殺られる気がした。
最初のコメントを投稿しよう!