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考太郎はその後、いくつもの会社を転々とし、いずれどこかの会社に属することも難しくなっていった。
父も母も、頼れる親戚もなく、その日を生きていくだけで大変な状況に追い込まれた。
「清濁併せ呑む」
そんな言葉を図書館で見つけた本にも書いてあった。
考太郎は高校を卒業してからの日々の出来事を確かめ算をするように振り返ったが、自分の思考に間違いはなかったと自身の検算に確信を増すばかりである。
ある日、空腹を抱えた考太郎は夢の中で2つの扉の前に立っていた。
左の扉はいつも開け慣れた扉である。
となりの右の扉にはぼんやりと霞がかかり、開けてはならないと無意識にこれまでもどこかで自分を制してきた。
左の扉をくぐるということは、いつか考太郎の当たり前を手放さなければならないことを暗示し、右の扉は左の扉の世界とは異なる世界へと通じている。
考太郎は、いつもの左の扉ではなく、となりの右の扉を初めてくぐって行った。
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