地の一巻

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「立て」 後から、女の忍者に襟首を掴まれて立たせられた。 振り向くと、黒髪をポニーテールに結んだ、すっきりした美人顔の忍者装束の女の子が冷たい目で僕を睨みつけている。 こんな目付きで女の子に睨まれるのは、いつものことなので、まあ、慣れてはいる。 「着いてこい」 ミルさんは、そう言うとすたすたと歩き始めた。 慌てて後を追う。 その時、初めて気付いたのだけど、辺りの風景がまるで変わっていた。 お城の天守閣はやけに新しかった。天守閣の周りも、入場券売り場も無ければ観光客もいないし、無かったはずの石垣や建物が増えてるし。 まるで、江戸時代のお城に戻ったみたいに見えた。 タイムスリップ? 多分そうだ。そうに違いない。 「ミルさん、ミルさん。ちょっと教えてください」 僕は開けたままになっている本丸の門を潜りかけているミルさんに追い付いて声をかけた。 「今って、何時代ですか?」 「時代? 何を言ってるんだ。取り敢えず、馴れ馴れしく話しかけるんじゃない」 「じゃあ、じゃあ、将軍様は今どこにいるんですか」 「将軍の動向を気にするとは、貴様やはり忍びの者なのか。将軍は丙戸にいるに決まってるだろ」 「へと? 江戸じゃなくて?」 「江戸とはどこだ。将軍の徳山家正様は丙戸城におるわ」 「へと時代? 何これ。タイムスリップの上に、パラレルワールド?」 急で長い石段をミルさんの後について下りながら、自分の陥った境遇に混乱し、同時に忍者装束ってお尻の形が意外と出るもんだな、などと考えていたのだけど。 と言うか ノーパン? もしかしてノーパン? 絶対そうだよ。 うん、うん。間違い無い。 僕はなんかとんでもない事態になっているような気になりながらも、前を歩くミルさんのお尻を堪能するのであった。
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