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「あれ?イノリとマリコは?」
冷静になって見回すと、二人がいない。
イノリだったら、いの一番に駆けてきそうなもんなのに。
「ああ、あの娘たちならあっちよ」
まっちゃんが部屋の隅を指差す。
そこにいたのは、玩具達に囲まれているマリコと、それの間に立っているイノリの姿だった。
「なにあれ…?」
「責任の所在を巡ってるんだって。あんたの玩具達が怒り出してね。一応、ちびちゃんが諌めてるみたいだけど」
マリコ、大分絞られたわね。
顔が真っ青だもん。家の玩具達はおっかないなぁ。
『あ、ママ!ヒメコ!』
わたしに気付いたイノリが駆け寄ってくる。
「ただいま、イノリ。ごめんね、心配かけて」
『心配なんてしてないわ。ママとヒメコなら、帰ってくるって信じてたもの』
胸を張るイノリ。
やっぱり色々成長してる。実にお姉ちゃんらしくなったものだ。
『こ、この度は私の一族が大変申し訳なく…創造主と妹に代わりまして私が謝罪を…』
もう一人のお姉ちゃんが、土下座でもしそうな勢いで頭を下げる。
い、いや…もういいから…。
わたしは別に怒ってないし、君たちの作者も謝罪とか望んでないよ。
「…いいんだよ。これで何もかも元通りだし、ね」
『あら、そうでもないわよ?』
…え?
と、思う間もなく、玩具達がわたしに群がってきた。
全員心配してくれたんだと思うが、一斉に喋ってる上に、もみくちゃにされてるから、何を言ってるのかさっぱり解らない。
『みんなママのこと心配してたのよ!動けるようにもなったし、これから賑やかになるわね!』
あはは…そりゃあ大変だ。
のし掛かる玩具達に苦笑しながら、わたしは幸せの重さを感じていた。
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