100本の愛

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100本の愛

「結婚記念日に逝くだなんて酷い娘だねぇ…」  エンゼルケアをされたユキコが眠っている前でトヨがポツリと呟いた。 「お義母さん……」  トモカズは、トヨの言葉にどう答えればいいのか、分からなかった。白く着飾られたユキコは、あまりにも美し過ぎてトモカズは、妻が亡くなったことを実感出来ない。  しかし、ユキコの母であり、トモカズにとって義母であるトヨが寂しげに眠っているユキコでなく、娘の夫トモカズに同意を求めるように語り掛けてくれることから、なんとか事実を把握することが出来た。 「子供の頃から、ドジな娘だったけどね。まさか自分の結婚記念日に死ななくったって良いじゃないのよ。トモカズさんだって、あんたと迎える結婚記念日を楽しみにとしてたんだよ」  ユキコの薄く化粧をされた冷たい頬を一撫でして、トヨは喋り続ける。 「今年は、誕生日に薔薇の花を貰うって言ってたのに。まさか、花にまみれて眠ってるなんて笑っちまうよ」  笑っちまうなんて言っていても、トヨの目は涙で濡れている。今にも零れそうでも、堰き止めるつもりもないようだ。そのまま、一つ二つと涙が溢れだす。 「ほんとに大バカもんだね、この娘は……」     
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