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しかし、間に立った、というか伯母の死後いろいろお世話になった司法書士さんで、
神崎さんという人が「伯母様がずっとすんでいらしたので、小さな虫のことなどまったく問題ありません」といったので、
ぼくは安心してはんこをバンバンと押した。
ぼくは人の話を信じるほうだから。
そして母は大賛成であった
母は早く自分の家からぼくを追い出したかったのだろう。ひょっとして父も母が追い出したのかも、とこの頃思うくらいだ。
母は虫など恐れをなしてよりつかないほど強い人であったから。
そういうわけで、ぼくは汗水たらすことなく一戸建ての所有者になったのだ。
今日はこれからその家の掃除にいくことになっている。
私鉄の駅から徒歩18分のその家は、住宅街を形成しているかたまりの一番端に位置し狭い用水路に近い所にある。
土地は約200平米。建物は築42年。
木造なのでいろいろ修理が必要かもしれない。道具の扱いには自信がない。
場合によっては業者を呼ぶ必要があるだろうか。
しかし、ぼくはその日はあくまでも下見のつもりだった。
水道や電気の開始手続きも必要だろう。
できればバルサンなどを炊きたいと思っていた。とにかくバルサン、さん付けなんて失礼だろう。まず第一にバル様だ。
司法書士さんから渡された鍵と「引っ越しまるわかりガイドブック」なるものを手に駅から家を目指しているところだ。
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