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しかし、この痛さ、この焼ける熱さに対抗するには脳内はハレーションを起こし、とても冷静な判断は無理だったのだ。
「しっこ、を、いや、水を」と、わけのわからないことを言いながら、元伯母さんの家がある敷地に駆け込んだ。
予想したとおり外水道があった。これだけの樹木に水を撒くには水道が必要だと、一応論理的に考えたのだ。しかし、水道に蛇口があるかどうかは不明、と思いつつ駆け寄ると、まさに天の助け!
神様、仏様、伯母様、感謝します!
蛇口はしっかり回すことができ、冷たい水がほとばしるように出る。
ぼくは患部を水にさらした。
すでに皮膚内では、蜂の毒とぼくの白血球が戦い、炎症が発生しているだろう。この針と毒を吸い出した方が、もちろんよいということは知っている。
しかし、ぼくは自慢でないが、ヘたれである。つまり、意気地なしだ。だいたい自分の腕に口をつけ、吸い出すなどは、
やってやれないことはないだろう、が。できれば避けたいのだ。
ぼくは水をじゃあじゃあ出し続けた、なんとか毒が流れ出てしまいますように、と祈願しながら。
それで、足音に気が付かなかったのだろう。
「あらあら、災難でしたね」
と声がする。顔をあげると女性がいた。
お、伯母さん? なわけない。
大関きよと言う名のおばさんは78歳で他界したのだ。ではいったい? この婦人は誰だ。
これではまるで小説のような展開ではないか?
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