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「さ、こちらにみせてくださいな」
とぼくの腕をとると、患部に口をあて、ちゅうちゅうと吸い、毒のようなものをぺっと吐きだした。
ますます、マンガのようだ。こんなことが現実であるはずがない。
とにかく腕の脂肪、いや血を吸われるなど、生まれて初めての経験で、痛さとあいまって恥ずかしさが増大し
「な! なにをするんです!」ぼくは、腕を引っ込めようとしたら、強い手で、引き戻される。
「いうことを聞きなさい!」
なんだ、なんだ、この女は、痴漢なのか?
ぼくは、蜂に刺された痛みと、その驚く出来事で狼狽し悶絶しそうになる。
女はやっと毒をすいだすのをやめて、にっこり笑っていった。
「これでよろしいわ。さ、おうちで消毒しましょう。ユウちゃん」
え? ユウちゃんだって? ぼくの名は大関朋朗というのだ。どこにもユウなんてついていないぞ。
「は、ぼくは、ユウちゃんじゃないし、それにおうちって」
ぼくが相続したつもりの、いや、ぜったいにはんこをしっかり押した、もと伯母さんのだと推測される家に、その女は入っていく。そして手招きしているのだ。
「え?」 ぼくは絶句した。
そもそもこの家は、そうだ
間違っているのかもしれない。他人の家なのだ。そうだ。きっとそうなのだ。
家宅不法侵入だったのかも。
しかし、もう、あらがう術も力もない。
招かれるままにとぼとぼと玄関に向かうとそこには
「大関きよ」とおばさんの名前の表札がかかっている。
ああ、これはどうしたことか?
ぼくは詐欺にあっているのだろうか?
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