1人が本棚に入れています
本棚に追加
「便器ちゃんだけでも逃げるんだ。オレたちはもう、走れないし一緒に行けない」
ブラカスちゃんが声を荒げた。
「ダメだ、二人を置いていくなんて僕には出来ない。だって二人は僕のためにアムリタを使い果たして」
「いいから行くんだ」
「行って!」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、絶対に嫌だぁ」
ズドドドドドドドドドッ
言い争う僕らの方に、もう一度ビッグマウス・サンドワームが迫ってくる。
「ああ、もうダメだ。便器ちゃんだけなら逃げられたのに」ブラカスちゃんが言った。
「いいんだ、こんなに大事にしてくれる友達と一緒なら、僕はもうどうなったって、いいんだ」
「もう、便器ちゃんのバカ、大バカ」エメドラちゃんが言った。
ズドドドドドドドドドドッ
ビッグマウス・サンドワームが砂を盛り上げながら近づいてくる。もうすぐそこまで迫っていた。
僕らは自然と無言で手をつないで輪になった。
「ぼく、記憶が無くなっても、最後にこんなに大切なズルンズと一緒にいられて良かったな」
「私も、私も良かった」
「オレもおんなじさ」
僕らはもう生きるのを諦めて、最後の光景として、大切な友人の笑顔をまぶたに焼き付けようと見つめ合っていた。
ズトドドドドドドドッ
「さようなら」
「さようなら」
「さようなら」
チリーン
最初のコメントを投稿しよう!