9話

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「便器ちゃんだけでも逃げるんだ。オレたちはもう、走れないし一緒に行けない」  ブラカスちゃんが声を荒げた。 「ダメだ、二人を置いていくなんて僕には出来ない。だって二人は僕のためにアムリタを使い果たして」 「いいから行くんだ」 「行って!」 「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、絶対に嫌だぁ」  ズドドドドドドドドドッ  言い争う僕らの方に、もう一度ビッグマウス・サンドワームが迫ってくる。 「ああ、もうダメだ。便器ちゃんだけなら逃げられたのに」ブラカスちゃんが言った。 「いいんだ、こんなに大事にしてくれる友達と一緒なら、僕はもうどうなったって、いいんだ」 「もう、便器ちゃんのバカ、大バカ」エメドラちゃんが言った。  ズドドドドドドドドドドッ  ビッグマウス・サンドワームが砂を盛り上げながら近づいてくる。もうすぐそこまで迫っていた。  僕らは自然と無言で手をつないで輪になった。 「ぼく、記憶が無くなっても、最後にこんなに大切なズルンズと一緒にいられて良かったな」 「私も、私も良かった」 「オレもおんなじさ」  僕らはもう生きるのを諦めて、最後の光景として、大切な友人の笑顔をまぶたに焼き付けようと見つめ合っていた。  ズトドドドドドドドッ 「さようなら」 「さようなら」 「さようなら」  チリーン     
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