第3章

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「おれはりょうちゃんのこと、あきらめてないよ」 ぞくっとした。 血走った瞳が俺を狙って暗く光る。気がつけば冬馬の両手が俺を壁にぬいつけていた。逃げ場がなくなった。雨の勢いが弱まったのは、あいつが俺を囲っているせいだ。 「……りょうちゃんが好きな子ができるたび、その子を潰す。やめないよ。ずっとね」 「冬馬……」 「でもりょうちゃんは、それでいいの? 自分のせいで、何の罪もない子が傷つくことになっちゃっても?」 「俺に、どうしろって言うんだよ……」 その言葉を待っていたみたいに、冬馬が綺麗な唇をゆがめて笑った。 「おれとつきあってよ。りょうちゃん。誰にも内緒でいいからさ。おれの気が済むまで、おれのものになってよ? そうしたらもう、誰も泣かさないよ?」 「……」 黙って、冬馬を見上げながら、俺はこんな時なのにぼんやりと考えていた。 こいつは誰なんだろう、と。 本当に俺の知っている冬馬なのか? 自分が悪くなくてもペコペコ謝っていて、いつも俺の半歩後ろをオドオドしながらついてきた奴なのか。 もしかしたら冬馬は、ずっとそんな自分が嫌いだったのかな。 ふとそんなことを思った。 気弱で、自分に自信がないから俺にふられたと思ったのかな。だから自分をめちゃくちゃにこわそうとしているのか。
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