第3章

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第3章

だけど、俺の願いは叶わなかった。 それから1ヶ月もたたないうちに、花井さんはフラれた。 梅雨時のじめじめした季節に、教室で泣き出してしまった花井さんを、女子が取り囲んでいる。 かつていいなと思った子が泣いている姿というのは、やっぱりつらい。ザマアミロなんて思えない。 しかも女子は口々に冬馬のことを罵っているのだ。「人を愛せない男」「冷血漢」「人間のくず」などなど散々言われている。 昔の冬馬は、気が弱くてオドオドしていて、それでたまに俺もいらつくこともあったけど、女子にそこまであしざまに言われるような男じゃなかった。 自分が悪くなくても謝ってしまうようないいやつだった。 それが変わってしまった。 わかっていたつもりだったけど、辛い。 もやもやを抱えたまま、次の体育の授業に行くために、ジャージに着替えて長い渡り廊下を歩いている途中で、ばったりとあいつに、冬馬に出会った。 珍しく隣に女子がいない。 目が合ってもいつもの通りそらされた。いつものことなのに、なぜか今日は我慢ができなかった。 「おい! お前、いい加減にしろよっ!」 すれ違った瞬間、怒鳴りつけていた。あいつの背中を睨みつけて、なおも続ける。 「花井さん、泣いてたぞ! 何とも思わないのかよっ!」 「別に。全く何も思わないけど?」 ブレザーのポケットに片手をつっこんで、冬馬は悠々と振り返った。無視されると思ったのに、今日は答えやがった。でも嬉しさはない。むしろ腹が立ってしょうがなかった。
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