第1章

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先生たちの案内に従って、自転車を駐輪場に停めて講堂付近まで歩いて行くと、屋外掲示板にクラス分けの紙が貼り出されていた。 掲示板を囲うように咲く、桜の花びらが風に散らされ、みんなの髪とかピカピカの制服に貼り付いている。 俺は無意識に自分の名前の隣にあいつの、本条冬馬の名前をさがしていた。俺が本間涼太(ほんまりょうた)だから、その次にないかと目を凝らしたけど、全く知らない袴田とか本堂という名前しか無かったので、ちょっとだけガッカリした。 ちょうどその時だったと思う。 ざわめきが急に大きくなった。そのまま、波みたいに俺の横を通り過ぎていく。みんながみんな、ぽかんと口を開けて、掲示板へ向けて歩いていくやたらと背の高い男を見送っている。 名前も知らない女子たちが小声で何か囁いている。「読モ?」という声がたしかに聞こえた。 そいつの周りだけ後光がさしてるみたいに、めだっていた。栗色のちれぢれパーマの髪は、人によっては軽薄にも見えるのに、そいつには妙に似合っていた。芸能人か、と思ったくらいだった。 そいつの周りだけ、ぽっかりと空間が空いていた。足も長くて姿勢もいいから、よりスタイルが良く見えるんだろう。同じ制服でも違うもんだなと思いながら、掲示板を見上げるそいつの顔を見て、俺は絶句した。 「と、とうまー???」 近くの女子がビクッと肩を震わせて、俺を振り返る。 間違いない。冬馬だ。本条冬馬だ。 眼鏡もしてないし、髪の色まで変わってて、猫背もどっかに消えてしまってるけど、間違いなく冬馬だった。 「……」 だけど冬馬は、俺を確かに見たはずなのに、無言で目を逸らし、さっさと講堂に行ってしまった。 「ねー! あなた! あの子と友だちなの?」 「とーまって、あの子の名前? まさか同中?」 ひっきりなしに女子に話しかけられたけど、あまりにもキッパリ無視されたショックで、答えることができなかった。 入学式で話題をさらった冬馬は、それから一躍、時の人となって、主に女子の注目の的になった。 かつて俺のとなりをオドオドついてきた、あの時の冬馬は、どこにも居なくなってしまった。
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