第2章

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入学式で、まるで透明人間みたいに無視されてから、冬馬とは1度も口をきいていない。 あまりにも別人に変わりすぎて、俺からはあいつに近づくことができなかった。そしてあいつも、俺に好きだと告白までしたくせに、今では完全スルーで、女の子をとっかえひっかえしている、という噂だ。 ちなみにあいつがつきあった1人目は、俺の憧れの声優に目元がそっくりの、飛び抜けてかわいい子だった。2人目は放送部の子で、顔は普通だったけど、俺の好きな声優さんにそっくりな声で性格も良かったから、ちょっと気になってた子だった。そして3番目は言うに及ばずだ。 知らなかったけど、俺とあいつの好みは似てたんだな。じゃあなんで俺なんて好きって言ったんだ。俺は別に俺のこと、そんなに好きじゃないのにな。 「あーあ。やっぱ男は顔かなー。あいつ昔、読モやってたって噂もあるもんなー! こんな田舎で、んなわけねーだろ!」 椅子を斜めに傾けながら、袴田がぶうぶう言ってくる。 読モどころか、冴えない「独男」だったぞと思ったけど、日誌に集中するふりをして答えなかった。あの中学からここに通ってんのは俺だけだったから、過去のアイツのことはまだ伝わっていない。 「しっかし、まさか、ついにウチのクラスにまで毒牙にかけるなんてなぁー! あいつ、ほんとに見境ないよな」 天井を仰ぎながら袴田がいうのに、なぜかムッとした。 「毒牙はやめろ。あいつが一方的に悪いみたいじゃねーか」 「えっ、なんでかばうの? あいつ、モテない男の敵だろ?」 「一緒にすんな!」 おどける袴田を、日誌で殴ってやった。 俺だって悔しい。悔しいけど、彼女に目をつけたのはさすがだなとも思った。あいつ女を見る目だけはあるよな。 花井彩香みたいな、非の打ち所がない子であれば、次こそは長続きするだろう。そうでないと俺も浮かばれない。 どうか次こそは長続きしてくれよ。 だって今のお前はあまりにもお前らしくない。 どうか花井さんのことは大切にしてやってくれ。
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