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神隠しの先の諦観
その日、千勢は畑で雑草を抜いていた。
初夏の頃、雑草は毎日ぐんぐん伸びる。だから千勢も毎日畑に出ている。
(それにしても、この生活はいつまで続くんだろう。今日で二週間が過ぎる……)
考えて憂鬱になり、ため息を吐いた。
持ち前のプラス思考で何とかめげずに今日までやってきたが、あまりにも進展がなくさすがにくじけそうだった。
その時、土を踏みしめる音が近づいてきた。
お世話になっている家の誰かだろうかと思い顔をあげると、そこにいたのは制服を着たガラの悪い若い男だった。
「……何でしょうか?」
千勢はやや警戒しながら立ち上がる。
その際、男の姿をざっと確認した。腰に武器を帯びている。警察かと思うも、警察が訪ねてくる理由がわからない。ここはのどかな田舎のほのぼの農家の畑だ。
男は千勢を上から下まで観察するように見た後、胸ポケットに引っ掛けていた眼鏡をかけて改めて彼女を見た。
不躾な視線に不快感を覚え眉を寄せる千勢。
男は納得したような顔をして眼鏡を外すと、あっという間に千勢の右腕に手錠をかけた。もう一つの輪は彼の左腕にかかっている。
「……は?」
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