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その言葉に、二撃目の構えに入っていたカールがピタリと止まる。そして、男が嘘をついていないか見定めようとするように、頭からつま先までじろじろし観察した。
男は内ポケットから身分証を出してカールに突き出す。
カールは顔を近づけて、本物であることを確認するように隅々まで見ていった。
「……そうか。そいつは失礼したな」
納得したカールは、おとなしく鎌をおろす。それから千勢を見て、改めて男が誘拐犯ではないことを教えた。
男の名はニーロ・コスタグランデ。治安当局の異世界人取締り課の新人だ。
彼の仕事は、無許可で滞在する異世界人を捕まえて強制送還することである。
「異世界人て、そんな簡単に見分けられるものなの?」
千勢はちらりとカールを見やって疑問を口にした。
日本人な外見の千勢と、欧米人な外見のカール。千勢は、カールがアメリカ人だと言われたとしても何も疑いはしないだろう。
「異世界人の反応を検知する装置があるんだよ。俺自身もそいつを見分ける目を持ってるから、会えばわかる。念のため識別グラスも持っている」
識別グラスとは、先ほど千勢を見ていた眼鏡のことだ。
しかし、そんな小道具のことより千勢が関心を持ったのは『強制送還』のほうだった。
「私、帰れるんだ……」
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