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突然この見知らぬ世界に来てから二週間。帰る方法もわからず、親切なカールとその家族に迎えられて何とかやってきたが、ようやく希望が見えてきた。
「よかったな、チセ」
カールのあたたかな手に背をなでられて、千勢は安堵から涙がこぼれそうになった。強制だろうが何だろうが、彼女が強く望んでいたことだからだ。
つい先ほどまで敵だと思っていたことなど忘れ去り、千勢は期待のこもった目でニーロを見た。
一方ニーロは落ち着いた様子で手帳を取り出し、千勢に質問を始めた。
ここに来たのは偶然かそれとも誰かに連れて来られたのか。
千勢がいた世界とは違う、知らない世界に来たのは初めてか。
千勢の世界で異世界人を見たことはあるか。
別の世界に行ってみようとして特殊な儀式を行ったりしたか。
などなど。
「最後の質問だ。あんたがここに来る直前にいた場所は、曰くつきの場所だったか?」
千勢は、そんなことないと首を振る。
「人通りが少ない時間帯だったけど、ごくふつうの住宅街の道だよ」
「夜か?」
「ううん。日中」
「ふぅん……じゃあ、ただの偶然か。運が悪かったな」
素っ気ない言葉の中に、千勢はほんの少しだけ同情の色を感じた。第一印象は最悪だったがけっこういいヤツかもしれない、などと思ってしまう。
それから、質問を受けている間に浮かんだ疑問について尋ねた。
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